ジェーン・スー『ひとまず上出来』を読んで
子育てが落ち着いてくると、ふと今までの私を振り返ることがある。
息子たちが20歳になった。
希望の進路を歩んでいる。
私たち家族を養うため、希望とは違う職を選んだ彼。
昔から漠然と思っていた。
いつか彼が、希望する仕事に就けたらいいな、と。
それも叶った。
私の役目は終わった……ふとそんな気がした。
なにか残したくなった。
4人で家族写真を撮ろう!
みんな笑っていた。
「よくやった私。」
そう心から思えた瞬間だった。
ただ、この写真を見ると涙が出てくる。
おそらく、気づいてしまったからだ。
私にはなにが残る?
今まで私は、私に何をしてきた?
*
あれで良かったのかな。
後悔というか、反省というか。今更なのに落ち込んだりする。時間は戻せないのに。
そんなときに目に入ったのが、『ひとまず上出来』というタイトルだ。
なんか慰めてくれているような、まだ読んでないけど勝手にそんな気になってしまっている。
いったいどんなことが書いてあるんだろう。読むのが楽しみだ。
*
ジェーン・スーさんもいろんな変化に戸惑いながら、その時どきで最善を選んでいるんだと思った。
境遇は違うけど、同じ年代だからか、身体の変化や人との距離感、ちょっとした違和感。この年になって感じること、考えることに「うん。そうなんだよね」って思うところがあった。
何が正解かは、きっと今はわからない。
読んでいると、身体のこと、人との関係、息子たちのこと。あちこちで自分の生活を思い出した。
なかでも「スタイルよりも、生きるため」の筋トレの話は、今の私にとってタイムリーだ。
運動好きな人の影響で、私も運動を始めた。一緒にアウトドアを楽しむには、如何せん体力と筋力が必要なのだ。
やってみたら、少しずつ身体が変わってきた。
数年前の記録より3cm増えていた腹囲が、2cm減った。万年大根足をコンプレックスに感じていたけれど、こちらもほっそりしてきた。
体重の減りが少ないのは筋肉がついているからだ。そう信じている。
筋トレって、やれば自分に返ってくるんだよ!
身体が変わると、気持ちも上に向く。
それに最近、前だったら「しんどそう」と思って挑戦しなかったことにも、挑戦するようになった。
登山。42kmのウォーキング大会を完歩。これから60kmにも挑戦する。
好奇心は前から強い方だったけれど、行動が伴わなかった。
今は、行動が伴ってきた感じだ。
*
屋久島では、縄文杉に会いに往復22km歩いた。
朝は4時起き。
朝の弱い私にはしんどい時間。でも、ちゃんと起きられた。
やればできるじゃん。
自分の目的のために起きるのは当たり前なんだけど、そう思った。
8km続くトロッコ道。
写真や動画で何度も見ていたけれど、実際に見ると、なんともノスタルジックな感じがした。
小雨の降るなか、期待と、歩ききれるかという不安を抱えて進んだ。あの道は今でも覚えている。
そして、トロッコ道が終わったあとは、地獄の登山。
すでに8km歩いている。雨だし、一緒に歩く人は健脚だから早いし、結構しんどい。
まだ〜。
そう思いながら、必死に登った。
たどり着いた先には、縄文杉がいた。
なんか神聖な空気を感じた。
ちょうどそのとき晴れ間がさしたからかもしれないけれど、静かな時間が流れていた。
あんなにしんどかったのに、歩き終えて思ったのは、
また会いにきたいな。
だった。
*
こういう体験は、どれも誰かと一緒だ。
でも、私もやってみたいと思うからやっている。イヤイヤじゃない。
一緒に出かけて、しんどい思いもして、見たかったものを見て、また行きたいと思う。
そんな時間のなかで、心から笑えている私を好きだな、と思えるようになった。
本の最後にこんな問いがあった。
加齢は楽しいことなのか、苦しいことなのか。
今まで、そんなふうに考えたことはあまりなかった。
いつも目の前のことや、目の前にいる人のことを考えていたから。
体力が衰えるのは困る。もっと一緒に楽しみたいから、筋トレも頑張りたい。
加齢による衰えは苦々しいけれど、毎日は前より輝き出している気がする。
ただ、ひとりだったらどうなんだろう。
同じように出かけたり、挑戦したりするだろうか。
そこは、まだわからない。
今わかるのは、前なら「しんどそう」で終わっていたことを、やってみたということ。
そして、しんどかった道の先で「また会いにきたい」と思ったこと。
前より、私を好きになれてきている気がするという感覚。
ひとまず、上出来かな。
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