001①|よくやった私。ひとまず、上出来かな。

ジェーン・スー『ひとまず上出来』を読んで

子育てが落ち着いてくると、ふと今までの私を振り返ることがある。

息子たちが20歳になった。

希望の進路を歩んでいる。

私たち家族を養うため、希望とは違う職を選んだ彼。

昔から漠然と思っていた。

いつか彼が、希望する仕事に就けたらいいな、と。

それも叶った。

私の役目は終わった……ふとそんな気がした。

なにか残したくなった。

4人で家族写真を撮ろう!

みんな笑っていた。

「よくやった私。」

そう心から思えた瞬間だった。

ただ、この写真を見ると涙が出てくる。

おそらく、気づいてしまったからだ。

私にはなにが残る?

今まで私は、私に何をしてきた?

*

あれで良かったのかな。

後悔というか、反省というか。今更なのに落ち込んだりする。時間は戻せないのに。

そんなときに目に入ったのが、『ひとまず上出来』というタイトルだ。

なんか慰めてくれているような、まだ読んでないけど勝手にそんな気になってしまっている。

いったいどんなことが書いてあるんだろう。読むのが楽しみだ。

*

ジェーン・スーさんもいろんな変化に戸惑いながら、その時どきで最善を選んでいるんだと思った。

境遇は違うけど、同じ年代だからか、身体の変化や人との距離感、ちょっとした違和感。この年になって感じること、考えることに「うん。そうなんだよね」って思うところがあった。

何が正解かは、きっと今はわからない。

読んでいると、身体のこと、人との関係、息子たちのこと。あちこちで自分の生活を思い出した。

なかでも「スタイルよりも、生きるため」の筋トレの話は、今の私にとってタイムリーだ。

運動好きな人の影響で、私も運動を始めた。一緒にアウトドアを楽しむには、如何せん体力と筋力が必要なのだ。

やってみたら、少しずつ身体が変わってきた。

数年前の記録より3cm増えていた腹囲が、2cm減った。万年大根足をコンプレックスに感じていたけれど、こちらもほっそりしてきた。

体重の減りが少ないのは筋肉がついているからだ。そう信じている。

筋トレって、やれば自分に返ってくるんだよ!

身体が変わると、気持ちも上に向く。

それに最近、前だったら「しんどそう」と思って挑戦しなかったことにも、挑戦するようになった。

登山。42kmのウォーキング大会を完歩。これから60kmにも挑戦する。

好奇心は前から強い方だったけれど、行動が伴わなかった。

今は、行動が伴ってきた感じだ。

*

屋久島では、縄文杉に会いに往復22km歩いた。

朝は4時起き。

朝の弱い私にはしんどい時間。でも、ちゃんと起きられた。

やればできるじゃん。

自分の目的のために起きるのは当たり前なんだけど、そう思った。

8km続くトロッコ道。

写真や動画で何度も見ていたけれど、実際に見ると、なんともノスタルジックな感じがした。

小雨の降るなか、期待と、歩ききれるかという不安を抱えて進んだ。あの道は今でも覚えている。

そして、トロッコ道が終わったあとは、地獄の登山。

すでに8km歩いている。雨だし、一緒に歩く人は健脚だから早いし、結構しんどい。

まだ〜。

そう思いながら、必死に登った。

たどり着いた先には、縄文杉がいた。

なんか神聖な空気を感じた。

ちょうどそのとき晴れ間がさしたからかもしれないけれど、静かな時間が流れていた。

あんなにしんどかったのに、歩き終えて思ったのは、

また会いにきたいな。

だった。

*

こういう体験は、どれも誰かと一緒だ。

でも、私もやってみたいと思うからやっている。イヤイヤじゃない。

一緒に出かけて、しんどい思いもして、見たかったものを見て、また行きたいと思う。

そんな時間のなかで、心から笑えている私を好きだな、と思えるようになった。

本の最後にこんな問いがあった。

加齢は楽しいことなのか、苦しいことなのか。

今まで、そんなふうに考えたことはあまりなかった。

いつも目の前のことや、目の前にいる人のことを考えていたから。

体力が衰えるのは困る。もっと一緒に楽しみたいから、筋トレも頑張りたい。

加齢による衰えは苦々しいけれど、毎日は前より輝き出している気がする。

ただ、ひとりだったらどうなんだろう。

同じように出かけたり、挑戦したりするだろうか。

そこは、まだわからない。

今わかるのは、前なら「しんどそう」で終わっていたことを、やってみたということ。

そして、しんどかった道の先で「また会いにきたい」と思ったこと。

前より、私を好きになれてきている気がするという感覚。

ひとまず、上出来かな。

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